1. はじめに:歯が噛むと急に痛くなったときに考えるべきこと
歯を噛むと突然強い痛みを感じることは非常に不安な体験です。「歯の神経が死んでしまったのか?」や「膿がたまったのか?」といった疑問が頭をよぎるのは当然です。痛みの原因としては、さまざまな疾患が考えられ、痛みの性質や進行具合によって治療方法も異なります。本記事では、急な歯の痛みを引き起こす可能性のある原因を専門的に解説し、迅速に対応できる方法をお伝えします。
2. 噛むと歯が痛い原因とは?代表的な症状と疾患
歯を噛んだときに発生する痛みには、いくつかの主要な原因が考えられます。以下で、それぞれの病態とその特徴について詳しく解説します。
2.1 歯の神経が死んでいる(失活歯)の可能性
原因: 歯の神経が死んでしまう最も一般的な原因は、深刻な虫歯です。虫歯が進行し、歯の神経にまで感染が広がると、神経が壊死し、歯の内側で膿がたまることがあります。外的な衝撃や歯のひび割れによって神経が損傷する場合もあります。
症状:
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痛みの性質: 神経が死んでいる歯では、痛みが突然発生し、強烈で鋭い痛みが数秒から数分続くことがあります。痛みは噛んだり、熱いものや冷たいものに反応することで悪化しますが、進行すると温度刺激に反応しなくなることもあります。
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無痛性: 初期段階では痛みがほとんど感じられない場合もありますが、神経が完全に死ぬと痛みはなくなることがあります。この場合、膿が歯根の先にたまると周囲の歯茎が腫れ、再び痛みが出現します。
2.2 歯根の先に膿がたまっている(根尖性歯周炎)
原因: 歯の神経が死んで膿がたまる状態は「根尖性歯周炎」と呼ばれ、虫歯が進行して神経が壊死し、細菌感染が歯根に広がることが原因です。この感染により、歯の根の先(根尖部)に膿がたまり、周囲の歯茎や顎の骨に炎症を引き起こします。
症状:
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急性の痛み: 噛むと歯が痛むほか、膿がたまることで強い痛みを感じます。特に歯の根元に圧力がかかると痛みが強烈になります。膿が増えることで歯茎が腫れ、熱を持つことがあります。
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腫れと膿: 膿が外に排出されることもあり、歯茎に膿がたまり、膿瘍として膨らむことがあります。膿が外に流れると一時的に痛みが緩和されることがありますが、根本的な治療が必要です。
2.3 歯のひび割れ(クラックトゥース症候群)
原因: 歯にひびが入ると、そのひびが歯の内部にダメージを与え、神経が刺激されることがあります。ひびが入る原因としては、硬い食べ物を噛んだり、外的な衝撃が加わることが挙げられます。
症状:
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突然の痛み: 歯にひびが入った場合、食事中や噛んだときに突然鋭い痛みが走ることがあります。特に噛み合わせの際に痛みが発生しやすく、食べ物の硬さに反応して痛むことが多いです。
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症状が不定期: クラックトゥース症候群は、痛みが断続的に現れるため、患者が痛みを自覚するタイミングがバラバラです。
2.4 噛み合わせや歯ぎしりによる痛み
原因: 噛み合わせが悪かったり、歯ぎしりや食いしばりをしていると、歯や歯茎に圧力がかかり、痛みを引き起こすことがあります。これにより、歯の表面が削れたり、歯根周囲に炎症が生じることがあります。
症状:
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歯全体の鈍痛: 特に起床時に歯が痛くなる場合、歯ぎしりや食いしばりが原因であることが多いです。痛みは常に感じるのではなく、朝方やストレスがかかるときに感じやすいです。
3. 神経が死んだ歯の特徴とは?見分け方と注意点
歯の神経が死んでしまった場合、いくつかの典型的な特徴が現れます。神経が死んだ歯を早期に見分け、適切な治療を受けることが重要です。
3.1 冷たいものや熱いものに反応しない
神経が生きている歯は温度変化に敏感に反応しますが、神経が死んだ歯は冷たいものや熱いものに対して反応が鈍くなります。特に冷たい飲み物を口に含んでも痛みを感じなくなった場合は、神経が死んでいる可能性が高いです。
3.2 歯の色の変化(変色)
神経が死んでしまうと、歯の色が変わり始めます。初めはわずかな色の変化が見られることがありますが、進行すると歯の色が黄色や灰色に変わります。この変色は歯内での血流が途絶え、歯の色素が変化することによるものです。
3.3 痛みがなくなったのに腫れる・違和感が続く
痛みが一時的に収まっても、歯茎が腫れたり、膿がたまっていることがあります。歯の神経が死んだ後も、歯の根や歯茎に感染が広がっている場合、腫れや膿が出ることが多いです。こうした症状が現れると、早期に専門的な治療が必要です。
4. 歯の根に膿がたまるとどうなる?根尖病変の症状と進行
歯根の先に膿がたまる「根尖性歯周炎」は、進行することで深刻な合併症を引き起こすことがあります。膿が歯根周囲の組織に感染を広げることで、以下の症状や合併症を引き起こします。
4.1 膿がたまる原因(虫歯・神経の壊死など)
根尖病変の主要な原因は、虫歯や外的衝撃によって歯の神経が壊死し、感染が歯の根に広がることです。この過程で、歯根の先に膿が溜まり、その膿が周囲の骨や歯茎に広がります。
4.2 痛み・腫れ・違和感のサイクル
膿がたまると、痛みは周期的に現れることが多いです。膿が溜まることで歯茎が腫れ、膿が自然に排出されることがありますが、これだけでは完治しません。膿が残っている場合、症状は繰り返し現れることがあります。
4.3 放置するとどうなるか
放置すると、膿が周囲の骨に広がり、歯が支えを失う可能性があります。膿が広がることで骨吸収が進行し、最終的には抜歯が必要になる場合もあります。さらに、膿が血流に乗って他の部位に感染が広がる可能性もあるため、早期治療が不可欠です。