唇のできもの・しこりを放置していませんか?

その粘液腫(ねんえきしゅ)の診断と確実な治療法を専門医が解説
監修:岡山大学 歯学博士 厚生労働省認定 歯科医師臨床研修医指導医 稲熊 尚広
「唇の内側にプクっとしたものができた」 「気づいたら、しこりが大きくなって、食事のときに噛んでしまう」 「一度潰れても、またすぐに膨らんできてしまう」
もし、あなたがこのような症状でお悩みであれば、その「できもの」は**粘液腫(ねんえきしゅ)**かもしれません。
粘液腫は、口の中にできる良性の腫瘍で、特に唇にできやすいものです。痛みがないことが多いため「そのうち治るだろう」と放置しがちですが、根本的な原因を取り除かなければ、何度も再発を繰り返してしまいます。
当院では、豊富な経験を持つ歯科口腔外科医が、粘液腫を正確に診断し、根本的な原因を取り除く治療を行います。
1. 粘液腫とは?知っておくべき基本的な知識
粘液腫の正体:水ぶくれ状の良性腫瘍
粘液腫は、口の中にある小さな唾液腺の管が詰まることが原因で発生します。
唾液腺は、唾液を分泌するための小さな管が無数に通っています。何らかの原因でこの管が破れたり、詰まったりすると、本来口の中に流れ出るはずの唾液(粘液)が、粘膜の下の組織に漏れ出して溜まってしまいます。この溜まった粘液の袋が、水ぶくれ状のできもの、すなわち粘液腫の正体です。
このため、粘液腫は「粘液貯留嚢胞(ねんえきちょりゅうのうほう)」とも呼ばれます。
粘液腫がよくできる場所と見た目の特徴
粘液腫は、特に以下の場所にできやすい傾向があります。
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下唇の内側: 唇を噛む癖がある方や、食事中に不意に噛んでしまうことが多いため、最も発生頻度が高い部位です。
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舌の裏側(舌下部): 舌を動かす際に粘膜が傷つきやすく、ここにできた粘液腫は「ガマ腫」と呼ばれることがあります。
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頬の内側: 頬の内側の粘膜を噛んでしまう習慣がある方に多く見られます。
見た目の特徴としては、以下のようなものが挙げられます。
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色: 透明感のある青白い、または赤みを帯びたドーム状の膨らみ
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感触: 触ると柔らかく、中には硬いしこりのように感じるものもあります。
粘液腫ができる主な原因
粘液腫のほとんどは、外部からの物理的な刺激が原因で発生します。
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口唇や頬を噛む癖: 無意識に唇や頬を噛む癖は、唾液腺に微細なダメージを与え、管の閉塞や破裂を引き起こす最大の原因となります。
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外傷: 食事中に唇を強く噛んでしまったり、転倒時などに口の中に傷を負ったりすることで、粘液腫が発生することがあります。
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不適合な歯科治療: 合わない詰め物や被せ物、鋭利な歯の先端が慢性的に粘膜に擦れることで、刺激が加わり、粘液腫の原因となることがあります。
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その他: ごくまれに、唾液腺の炎症や腫瘍によって引き起こされる場合もあります。
2. 放置は危険!粘液腫を正確に見分ける重要性
「痛みもないし、放っておけば治るだろう」と考えるのは危険です。粘液腫は自然治癒することが非常に少なく、放置すると様々なリスクを伴います。また、他の口腔疾患と見分けることも非常に重要です。
「できもの」が粘液腫であるかをチェック
以下の症状に当てはまる場合は、粘液腫の可能性が高いです。
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再発を繰り返す: 破れて小さくなっても、数日から数週間で再び膨らむことを繰り返す。
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痛みがないことが多い: 多くの場合は無痛ですが、大きくなると違和感や圧迫感を感じることがあります。
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柔らかい水ぶくれ状: 触るとブヨブヨとした柔らかい感触がある。
見逃してはいけない!粘液腫と他の疾患との違い
口腔内のできものには、粘液腫の他にも様々な種類があります。特に注意が必要なのが、口腔がんです。自己判断は非常に危険ですので、以下のチェックリストを参考に、少しでも気になる点があれば専門医にご相談ください。
症状 | 粘液腫(良性) | 口腔がん(悪性) |
成長速度 | 比較的ゆっくり | 比較的速い |
痛み | ほとんどない | 進行すると痛みを伴うことが多い |
感触 | 柔らかく弾力がある | 硬く、触っても動かないしこり |
見た目 | 青白い水ぶくれ状が多い | 2週間以上治らない口内炎のような潰瘍、白い斑点、赤い斑点 |
出血 | 破れたときに出血する程度 | 触れると簡単に出血しやすい |
再発 | 根本的な治療をしないと繰り返す | 治癒せずに悪化していく |
この見分け方はあくまで目安です。 「2週間以上治らない口内炎のようなものがある」 「硬いしこりがある」 このような症状がある場合は、粘液腫ではなく、早期の診断と治療が不可欠な口腔がんの可能性も否定できません。当院では、口腔がんの診断も行っておりますので、まずはお気軽にご相談ください。
3. 粘液腫の診断から確実な治療までの流れ
粘液腫は自然に治ることが少ないため、再発を防ぐためには、根本的な原因を解決する治療が必要です。当院では、正確な診断から手術による摘出まで、一貫して行います。
3-1. 診断プロセス
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問診と視診・触診: いつ頃からできたか、どのような症状があるか、またできものの大きさ、色、硬さなどを確認します。
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生検(せいけん): 悪性の可能性が疑われる場合や確定診断が必要な場合は、腫瘍の一部を採取して調べる検査を行います。これにより、粘液腫であること、そして悪性ではないことを確定します。
3-2. 確実な治療法:手術による根本的な除去
粘液腫の最も確実な治療法は、外科的な手術による摘出です。当院では、患者様の負担を最小限に抑えるため、安全で確実な日帰り手術を行っています。
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局所麻酔: 患部に局所麻酔をかけ、手術中の痛みは全くありません。
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摘出手術: 粘液が溜まった袋(嚢胞)だけでなく、その原因となっている唾液腺本体も一緒に摘出します。これにより、再発リスクを劇的に低減させることが可能です。
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縫合: 摘出後は、患部を丁寧に縫合します。手術時間は通常15分〜30分程度です。
日帰り手術のメリット:
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身体的・精神的負担の軽減: 術後の入院が不要なため、日常生活に早く戻ることができます。慣れた環境で回復できるため、患者様の精神的なストレスが軽減されます。
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費用の削減: 入院費用がかからないため、治療にかかる費用を抑えることができます。
3-3. 手術を避けて放置した場合の長期的なリスク
「手術は怖いから…」と治療をためらっている方もいらっしゃるかもしれません。しかし、粘液腫を放置することは、以下のような長期的なリスクを伴います。
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症状の悪化と機能障害: 腫瘍が大きくなり続けると、食事や発音に支障をきたし、日常生活の質が低下します。
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感染症のリスク: 腫瘍が破れるたびに、そこから細菌が侵入し、感染症を引き起こす可能性があります。
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診断の遅れ: 「粘液腫だろう」と思い込んでいるうちに、口腔がんなど別の疾患が進行してしまうリスクがあります。
4. 粘液腫を予防するためのセルフケアと定期検診の重要性
粘液腫は再発しやすいため、治療後の予防策が非常に重要です。
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噛む癖の改善: 唇や頬を噛む癖を意識的にやめるよう努めましょう。
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歯科検診の習慣化: 歯並びや被せ物、詰め物に問題がないかを定期的にチェックすることが大切です。尖った部分があれば、歯科医に相談して修正してもらいましょう。
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口腔内の清潔維持: 常に口腔内を清潔に保つことで、粘膜の健康を守り、粘液腫だけでなく、他の口腔疾患のリスクも減らすことができます。
早期発見と適切な診断こそが、粘液腫の最も効果的な対処法です。当院では、治療後の再発予防までを考慮した、総合的な口腔ケアを提案します。
5. 専門医に相談して、唇の「できもの」をスッキリさせませんか?
唇や舌にできた「できもの」は、放っておいても解決しません。 当院では、口腔外科の専門医として、数多くの粘液腫を治療してきた実績があります。患者様の不安に寄り添い、丁寧な説明と安全な治療をお約束します。
「これって粘液腫かな?」「治療はどんな風にするの?」といった疑問や不安をお持ちの方は、どんな些細なことでも構いませんので、どうぞお気軽にご相談ください。
【当院のご案内】
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イナグマ歯科: 名古屋市天白区の歯医者・歯科・口腔外科・親知らずの抜歯治療
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院長: 岡山大学 歯学博士 厚生労働省認定 歯科医師臨床研修医指導医 稲熊 尚広
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ご予約・ご相談: 052-806-1181 または [予約フォームへのリンク]から
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